昔から絵は好きでした
小学生の頃は絵描きになろうか音楽家になろうか迷い、夢見たものです
奈良県の生駒中学を明日卒業しようとするまだ肌寒い春の日
大好きだった美術の先生に何かプレゼントして学校を去ろうと思った僕は
へたくそな油絵を描きました
真新しいキャンバスに チューブからひねり出した絵の具をべとべと塗りたくって絵を描きました
山崎新町から宝山寺に向かって少し登ったところにあった小さな池の絵です
当時憧れてたセザンヌをまねて

「ありがとね山里君 これは一生大事にするわ」
卒業の朝 まだ乾きもしない絵を受け取った若い先生は
「おかえしよ」
職員室からギターを持ってきて僕にくれました
「初任給で買ったのよ 大事にしてね」
ビニールケースに入った いい匂いのするギターでした

僕はそのギターを抱いて高校へ進み
そして やがて 音楽の道を歩き出したのですよ

ありがとうね先生
僕は何とか音楽で生きてます

あれから僕もずいぶん年をとりました
最近 無性に絵が描きたくなったのです でも 描き方がわからないんです
それでも 風の中で無心に絵を描いてると 昔の僕に戻れるんです
寒空の下で「先生にあげるんだ・・・」と一生懸命絵を描いたあの頃の僕に

今も先生の声が聞こえます
「ええ雲やねえ 一緒に 絵描かへん?!」

先生お元気ですか


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