風が止まった夏の日だ


(作品No.42 2002/6月 画紙: アルシュ36×51 絵の具:HOLBEIN)
第27回 日輝展 入選作



赤い丘は故郷の丘
ハモニカを 一人吹いてた少年の丘

息をひそめて駆け登る
いもうと泣かせて麦畑ぬけ
丘の上のあの場所へ 

兄を叱る母の声
風が止まった夏の日だ
草の匂いにうなだれる・・・
悪いのは僕なのに

兄が逝って 母が逝き
あやまりそこねた僕の悪戯

悪いのは僕なんだ

ワルイノハボクナンダ

赤い丘のこの先に 僕を待たない家がある

思い出だけが棲む家がある




僕の生まれた町は四国の盆地でした。正面の山々を越えるともうそこは豊後水道です。
眼下には予讃本線が通り、煙を吐いて汽車が走りました。 この丘の背中はすぐ池です。
「ごうの池」と呼ばれていて、割と大きな池でボートも浮かび、夏になるといつも、
アイスキャンデー売りの自転車のおじさんが来て、花火大会も催されました。
今は宅地開発で埋め立てられて住宅になっているという噂を淋しく聞きました。
画面の右には稲荷神社を祭る山があり、ジグザグ登る桜の参道は素敵でした。
左にはサイレン塔を背中に載せた細長い丘が盆地に突き出ていました。
その上を飛ぶ夢を良く見たもんです。
この丘から見る夕暮れは、ぽつぽつと灯る人家の明かりがとても優しく、
それを見ながらハーモニカやスペリオパイプをよく吹いてました。
「ご飯やでー!」を待ちながら・・・・

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