イメージの海V

「風の書き置き」


(作品No.47 2002/7月 画紙: CANSON 42×56 絵の具:HOLBEIN)
第27回 日輝展 入選作
第8回 IIAC(インターネット国際アートコンテスト) 入選作


風は確かにここにいた
無口な海を渡って来て
砂を巻き上げ 砂丘をえぐり
誰かの名前を呼んだはず

夕べはここで泣いていた
おーんおーんと泣いていた
そっと月を見上げては
誰もいないと泣いていた

丘を流れた涙の川は
さらさらと音を立て
風の言葉を刻み込む
いつかそれを読む誰かの為に



「ねえ 小さくていいから木を植えてくれないか
ねえ 一軒でいいから幸せな家を建ててくれないか
ねえ 一人でいいから子供を育ててくれないか
きっとその子は枝を揺らす僕の言葉がわかるだろう

そしてその子が智恵を持った日に
僕は恵みを降らせる雲をつれてこよう

風の子よ
太陽が踊る草原を作ろう
鹿が眠れる森を作ろう
銀鱗の池を作ろう
風の町を作ろう

風の子よ僕に乗れ」


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